政策金利がプラスなのはそんなにマズイのか

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/081219/fnc0812191413009-n1.htm:Title=日銀の政策金利を0.1%に引き下げる決定について、「プラスの政策金利だと、市中銀行が日銀に持つ預金にプラスの利子がつき、貸出などに回さない誘因となるので十分な効果は期待できない」という意見があります。

 私が中学生のとき、クラス対抗のバスケットボールでどう考えても勝ち目のない試合がありました。バスケット部員の数が圧倒的に違ったわけです。級友が叫びました。「よーし作戦を言うぞ。ハーフラインを越えたら(シュートを)打つ。それだけ。行こか」当然惨敗でした。

 合理的な資金運用は、「何%を越えたら預ける」という形のものでしょうか。もちろんそうではありません。http://hnami.or.tv/d/index.php?%B5%A1%B2%F1%C8%F1%CD%D1:Title=機会費用の考え方にしたがって、「相対的に一番得な運用をする」のです。例えば、http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/fb/fbnyusatu.htm:Title=政府短期証券の利回りは12月17日以降急落したとはいえ、まだ0.35%あります。「利息がつくから」市中銀行が日銀当座預金を選ぶ、という考え方は不自然です。また、http://www.fsa.go.jp/policy/basel_ii/01.pdf:Title=銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成十八年金融庁告示第十九号)=いわゆるバーゼルIIの第56条によれば、日本政府や日本銀行に対する円建てエクスポージャーのリスク・ウェイトは一律に0%ですから、日銀当座預金がBIS規制上政府短期証券国債より有利、ということもありません。

 ところで、金利が下がると企業投資を誘発する、といういわゆるケインズ型投資関数は実証的に確かめられているのでしょうか。「資本の限界効率」はベネフィット(利潤率)とコスト(利子率)の差です。ちょいちょいとググったくらいでは学術論文が見つかりませんが、http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/research/r061201japan.pdf:Title=山本康雄「最近の設備投資動向」図表5を見ると、設備投資前年比実績と(ROA-負債利子率)はシンクロして動いているようです。ただし、ROAというのは1%くらい簡単に上下するもので(http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je08/08f21010.html:Title=平成20年年次経済財政報告図2-1-1)、負債利子率が0.2%下がろうと0.3%下がろうと劇的な差は生じないように思います。