学士力ふたたび

 学士力概念の大筋は2007年9月のhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/018/gijiroku/08022508/002.htm:Title=学士課程教育の再構築に向けて(審議経過報告)に示されていて、パブリック・コメントを経て大学分科会に正式報告があがる、ということのようですね。文書全体を読むと、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/daigaku/toushin/981002.htm:Title=1998年大学審議会答申の自然な延長が大半を占め、「学士力」はいわゆるhttp://hnami.jugem.cc/?eid=105:Title=出口管理/ディプロマ・ポリシーのひとつの表現として提示されているわけですね。いやはや、こういう文書をもう読まなくなってしまっているのは汗顔の至りです。

 埼玉大学経済学部の進路指導に関する主な情報源は、学生と同窓会です。学生の就職活動体験を報告書の体裁にして大量に蒐集し、在学生に読ませようという計画が進行中ですし、その一方で、http://www.keiwakai.net/:Title=経済学部同窓会・経和会から経済学部への意見具申も盛んです。もともと経和会と経済学部で始めた就職支援活動が、いまでは大部分http://www.saitama-u.ac.jp/support/syuusyoku/:Title=学生支援課の就職担当に移りましたが、引き続きご協力を頂いている経和会の方から、支援現場の様子も伝わってきます。

 いわゆる市場対応(現場の売り込み)の感覚で言えば、求人側の態度だって色々あるわけで、社会に受け入れられる卒業生クオリティをひとつに定めても(定めるだけでひと騒動ですが)、それがウリモノになるかというとなかなか難しいですね。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%83%BD%E5%8A%9B%E6%88%90%E7%86%9F%E5%BA%A6%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB%E7%B5%B1%E5%90%88#.E3.83.AC.E3.83.99.E3.83.AB2_.E7.AE.A1.E7.90.86.E3.81.95.E3.82.8C.E3.81.9F:Title=CMMでいうと、大学は特に教育に関して、レベル2に進むことが困難です。各教員の教育内容に干渉することが極めて難しいのです。そこへ外から組織全体に対して「約束の公表」を求めても、大学は言質を取られまいと抵抗し、何とでも読める文書を書きがちです。

 共同で運営する科目という「限定された喧嘩空間」を作れば、各教員の本丸科目で最終戦争を仕掛けることを避けられます。埼玉大学経済学部の3つの基本科目「経済学」「経営学」「法学」は学科が責任主体となったので、それぞれ一定の内部議論に基づいた内容となっていますし、1年生向けのプレゼミについても担当者会議を開催し、議事録を共有して、互いの中身を見せ合っています。こうした、いわば政策手段を持たなければ、出口の標準化は困難です。

 逆に言えば、この限りでの標準化は実現していますし、いまなら外部から圧力がかかれば、少し前には書けなかった具体的な約束を、実績に基づいて書けるかもしれません。「学士力」の内容は昔から議論されている「課題探求能力」をほんの少し具体化したものに過ぎませんから、厳しく言えば、ニュースにしたり新聞社説で取り上げたりする内容ではありません。大学を良く知らない人が騒いだだけです。まあ答申をきっかけに大学への具体的な圧力が強まるとしたら、確かにニュースですけどね。