ビンボの技術

 実家のある京都へ帰るたびに驚くのは、ゲームセンターはもとより、不況に強いといわれ続けてきたパチンコ・スロットまで河原町四条通りから撤退しつつあること。そしてマンガ喫茶も減ってきたように感じます。その跡にできているのは、カラオケ店。

 最近の20代のひとたちとカラオケに行くと、水のピッチャーを頼んだりするんですよね。度重なってお店に怒られたりしながら。そして部屋代しか払わずに、その時間を精一杯楽しみます。

 最近の若い人は飲みに行かなくなった、などとよく聞きます。ゼミ合宿が「お金がかかる」とゼミ生に敬遠されるケースもあります。ケータイ代は最後の最後までケチらないとか、いくつか例外はありますが、若い人はお金を使わずに時間だけを消費して楽しむことが、上の世代より上手になっているのかもしれません。DVDは思惑通りに売れず、オンデマンド放送もあまり話題として広がらず、DVDレンタル店のみが競争の果てに低価格化してコンテンツの窓口として元気。コンテンツの実勢価格を決めるのは、「それがなかったら時間をどう過ごすか」という代替的な選択肢のありよう。安いネット接続料金と、タダで提供される素人コンテンツ。著作権違反のものを除いても、玉石混交ながら時間をつぶす程度のコンテンツはあふれかえっています。それと競争するから、DVDは少数の信者がお布施として買う世界をなかなか破れません。

 一般的なシアワセの領域が、未知の領域に移っていっているのかもしれません。

 そんな世界でも、どうしても買わないといけないものを買うために、お金を稼いでいかねばなりませんが、どう頑張っても日本人が稼ぐものは総体で減っていくでしょう。だって働く世代が減るんですからね。ビンボをシアワセに過ごす知恵を身につけながら、仕方なくお金を使うところを見つけていく、両面の変化に備えないといけないのかもしれません。