アメリカ国債のファイナンススキーム

 新聞記事を見ると、FRBは住宅ローン金利などの市中金利押し上げ要因にならない程度に国債買いオペを運用しているようです。

NIKKEI NET(日経ネット):米DJニュース −米ダウ・ジョーンズのニュース

米国債市場概況】続落、格下げ懸念で10年債年初来安値更新
 米国債の利回りが上昇するなか、来週は住宅ローン金利の上昇も余儀なくされるかどうかが特に注目される。米連邦準備制度理事会(FRB)は、消費者の資金調達コストを下げることを主に目指している。米国債利回りの上昇が住宅ローン金利を押し上げると、FRB米国債買入の計画を、最大3,000億ドルから増額せざるを得なくなると一部でみられている。 

(2009/05/22 07:17)

一方、英Financial Times紙によると、中国はアメリカ国債買い控えが暴落の引き金になることを恐れ、また他に巨額の外貨準備を運用できる大市場もないので、アメリカ国債を買い続けています。買うことは出来ても、売りたいときに買い手が見つからないような運用先は困りますからね。

China stuck in ‘dollar trap’
Published: May 24 2009 23:30 | Last updated: May 24 2009 23:30

In March alone, China’s direct holdings of US Treasury securities rose $23.7bn to reach a new record of $768bn, according to preliminary US data, allowing China to retain its title as the biggest creditor of the US government.

“Because of the sheer size of its reserves Safe [China’s State Administration of Foreign Exchange] will immediately disrupt any other market it tries to shift into in a big way and could also collapse the value of its existing reserves if it sold too many dollars,” said a western official, who spoke on condition of anonymity.

 この組み合わせは、ますます多くの国債を中国に持たれることになり、ドル全面安の背景になっています。しかし考えてみると、長年アメリカが中国に要求し続けてきた人民元切り上げは、少しゆがんだ形で果たされるわけですし、中国は相変わらず国債を買ってくれるわけです。

 問題は、このスキームでアメリカ国債を市場が吸収しきれるかです。ドル安傾向は、ドル以外の通貨を運用の中心とする公私のファンドにとっては、アメリカ国債購入をためらわせる要因になります。足りないとなれば、FRBが買い支えるほかに方法はありません。

 中国のふくれる一方の外貨準備は、かつて世界恐慌前後にアメリカが行った金不胎化政策と同様に、フローの取引から通貨を排除してしまいます。通貨増発がインフレを起こしにくくなっているわけです。しかしその反面、ドルの減価は中国の財産減価に他ならず、中国人が労働した成果が何とも交換されないまま目減りしてしまうことになります。

「中国の貯めすぎ、アメリカの借りすぎ」が2008年の世界経済危機を引き起こしたと評されることがありますが、中国がフローの世界で何かもっとどーんと買い物をしないと根本的な不均衡は是正されません。それは最大の貸し手を失ったアメリカのドル暴落というリスクを伴い、中国が今までに貯めた外貨資産を一気に毀損してしまうかもしれませんから、新発債を買いながら資産を散じて何かを国内に持ち帰るという、政治的にも経済的にも難しいことをやらねばなりません。