「大人のやること」とヤミ金融

「大人のやることだから」というのは、無茶な意思決定をする知人を放置するときによく使われる言い訳。本人がシアワセで他人に迷惑をかけないなら、文句はつけられないものです。

消費者金融、審査強化で成約3割 厚労省制度見直しへ(asahi.com) 2009年7月26日

 消費者金融における融資の「成約率」が、3割を切って低迷している。新たに融資を申し込んだ10人のうち、借りられたのは3人もいない状況だ。貸金業法の全面施行を控えて業者側が審査を強化しているためだが、借りられなかった人が違法なヤミ金融に頼る可能性もある。

 売りたい人と買いたい人がいれば、バカ高くてもバカ安くてもとにかく市場価格はつくもの。融資の利率も同様で、まあ実際には逃げたとき追っかけるコストと手間などがあるので何ともいえませんが、危ない相手でも非常に高い利率を払ってくれるなら貸し手はいるはずです。

 出資法貸金業法を調整してグレーゾーン金利を撤廃する一連の法律施行は2009年12月に最終段階を控えていますが、「高い金利での取引」を禁止したために、「高い金利でしか借りられない借り手」は非合法市場での取引でしか市場金利での融資を受けられなくなりました。

 例えば東京都大田区が財政負担覚悟の中小企業融資を拡大して話題になりましたが、市場で成立しているのと異なった金利で貸せば借り手と貸し手のどちらかが機会費用を被るわけで、そんなことをするのは特定の目的に沿った融資をする公的機関くらいのものです。

 最低賃金は確かに国民の生活水準保証を考慮した数字であるべきですが、高くすれば工場を移せる企業は国外へ逃げ、国外労働者による安価な製品が入ってきます。また研修生制度の悪用などが成功したとき、ライバルとのコスト差がますます開くことになりますから、法を犯す誘惑も増すのです。ヤミ金融グレーゾーン金利撤廃の関係もこれに似ています。

 市場は確かに万能ではないのですが、人が関わって限りあるものを公平に分けようとすれば、どうしても不満が残ります。それと向き合っていくのは、あえて言えば有権者みんなが分担し、少なくとも自分の問題として関心を持つべき事柄でしょう。

 むかし「消費者は王様」という言葉がありました。王様であるなら、失政で首を絞められることもあるわけです。