フローとストックに関して

 「斬 フローとストックに関する自問自答」へのコメント
 コンピュータソフトで、他のソフトにも使い回す部分のことを「ライブラリ」とよく呼びますが、知り合いのSEさんが「ライブラリってのは、作ろうと思わないと作れないんだよ」って言ってました。ちょっとずつ知的ストックを積み上げて、というのは幻想で、意図的にストックを作ろうとまとまった時間を投入しないとストックは出来ないんだよ、というのがその人の意見。

 いやいや、Wiki の画面が派手とか地味とかいうことではなくって、Wiki でストックを貯めていく作業というか、目立たないコツコツと積み上げていく作業というのが、地味であるということです。

 にはまったく同意。

 いまネットでストックを積み上げようと思ったら、HTMLを出力するツールを使うより、Wikiを使うほうが柔軟で簡単。私もそう思います。システム的にはもっと多機能で統合的なコンテンツマネジメントシステム(CMS)を用意して、掲示板もWikiも同一のユーザデータベースで管理することはできます。XOOPSがその代表ですね。私も自分のサイトにインストールしたけど、使ってません。個人でストックを発信するなら、パスワードつきWikiで十分ですからね。他人とのやり取りを含むフローを管理するには最新のSPAM対策が不可欠で、これをブログ業者に丸投げしたいから、ブログを併用してます。

 ただ、昔書いちゃったHTMLとか、もともと紙だったものとかは、別途積み上げる必要があります。意図的にね。私の業界でこれに関連するのは、機関レポジトリ(機関リポジトリ)という枠組み。その機関に属する研究者が書いた学術文献を全部集めて公開して、まあはっきり言うと、出版社の電子ジャーナルに研究機関が払うお金を節約しようというものです。だいたい国民のおアシで研究したんだから、国民に公開しよう、という大義名分もありますが。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/47/12/47_806/_article/-char/ja
 私がコメントで「知的ストックを作っておアシをもらっている人ってけっこう多いんですよ。おアシを自分で払ってない人は、その存在を意識しないけどね。そういうひとがネットに猛烈に物を積み上げてます。」と書いたのは、これとか、シンクタンクのサイトとかをイメージしていました。今の世代の偉い人は、最終成果物をネットで読んでくださいと言われたら、まだちょっとキツいでしょう。自分のためにものを書いている人だけが、いまWikiを使っているんだと思います。

 Webコンテンツへの報酬については「投げ銭システム」とか、旧Nifty時代に提唱された「シェアテキスト」とか、いろいろ提案されてはいますね。英語圏を中心に、Paypalという送金システムを使って有志の寄付を募っているサイトを見かけます。「今月の目標額まで後何ドル」とかトップページに書いてたりね。
http://ekozukai.com/PAYPAL/PAYPAL-index.html

 人から注目されたいって言うのは、難しいですね。フローのやり取りで盛り上がるのは、ひとりではできないこと。いい常連さんがうまく出来ると、そのやり取りがまたバリューになって、見物人が現れます。パソコン通信時代から、「よく考え抜かれた発言であるほど、コメントのつけようがないので放置される」現象が問題になっていて、コメント係の確保が掲示板管理者の甲斐性、という側面はありました。
 しかし最近は、オープンな場で生産的なやり取りができることよりも、消耗させられるやり取りが続くことのほうが多くなっています。mixiの友人限定日記で遠慮のないやり取りをするほうが面白かったりね。